久し振りに、ごく近い身内に不幸があった。
亡くなった伯父には自分の子供がいなかったので、
子供の頃、可愛がってくれて小遣いを一杯貰ったし、
のらくろや長靴三銃士等の古い漫画を見させてくれた、
そんな想い出だけが、ただただ、頭の中を巡る。
倒れてから2ヶ月間、面会謝絶でICUに入っていたから、
順繰りに先に逝ってくれたことに、むしろホッとして、
胸を撫でおろしているのが本音といえば本音。
昨日、亡くなったという連絡があって、病院に向かう途中で、
昔、会社の先輩が声高に言ってたことを急に思い出した。
「ちょっとくらい具合が悪くても、病院なんて行っちゃいかんよ。
俺の知り合いは病院行くと、みんな病院で死ぬんだ。」
病院に着いて、霊安室に行こうとしたが、院内の案内地図には、
一切、そんな部屋は存在しないかのように、表示がなかった。
受付の人に聞いたら、地下一階とだけ教えてくれた。
地下一階に行っても、案内図には表示されておらず、
国立の広い病院の地下は、巨大な地下迷宮のようだった。
しばらく迷った後、紅葉が枯葉のように舞ってる絵に気付き、
その絵の通り、進んでいったら、やっとたどり着いた。
霊安室は、刑事ドラマのぞんざいな扱いしか知らなかったから、
生花で飾られた祭壇に、遺体が安置されていて、驚いた。
想定外に丁重な取り扱いに、自然に両手を合わせており、
心の中でお別れの言葉を述べている自分が居た。
さらに、複数の看護師さんたちまでお悔やみに来て頂いて、
簡単な告別式のようなセレモニーをして頂いた後、
搬送車で病院を出るまで見送って頂いた。
先輩、病院も悪くないじゃんと心の中で呟いていた。
これから葬式までに、何を思うのだろうか。
たぶん、それを空から眺めている死後の自分なんだろうな。