井の頭線の車窓では、紫陽花が咲き始め、梅雨空に彩りを添えてくれておりやす。
この時分は湿り気のせいか、景色もけぶりがちの優しい色合いに映りやす。
けぶりがちな景色で、真っ先にイメージするのは、やつがれの場合、鎌倉から江ノ島にかけての湘南でやんす。
梅雨どき、嫁と二人で鎌倉に行ったのは、もう20年も前のこと。
横須賀線の中で険悪なムードになり、北鎌倉降りる頃には、原因は忘れやしたが、大げんか。
建長寺辺りで、嫁の家計財布から、これで勝手に一人で廻れと5千円札が投げ付けられて、ついに別々に行くことに。
途中、完全に見失うものの、本当に不思議なんでやんすが、なぜか紫陽花寺辺りで再会。
振り出した雨にビニ傘買って、相合い傘で歩いてるうちに、いつの間にか仲直りして、牛タンシチューに舌鼓。
そのあと、江ノ電の車窓から眺めた七里ヶ浜の景色の目に優しかったこと。
あの紫陽花と雨がなかったら、20年も連れ添ってなかったかもしれやせん。
そんなわけでやつがれには、人一倍、紫陽花が優しい彩りに思えるわけでやんす。